2018年9月7日
 濃い、淡い緑が広がっているはずなのに、地肌の茶色があちこちでむき出しだ。巨大な爪にそこらじゅう引っかかれたかのような北海道厚真町の姿に驚きと恐怖を覚え、助けを待つ人々の無事を祈る。びっしりと植えられた木々の下から、冷た […]
2018年9月6日
 泣きっ面にハチ、踏んだり蹴ったりなど凶事が重なることを意味する日本語の言い方は多いが、英語の慣用句は雨と関係する。「IT NEVER RAINS BUT WHAT IT POURS」。「降れば土砂降り」と暗記した人も多 […]
2018年9月4日
 <まだ青い素人義太夫玄人(くろ)がって赤い顔して黄な声を出し>-。蜀山人(しょくさんじん)(大田南畝(なんぽ))の狂歌と伝わる▼思い出すのは落語の「寝床」。旦那が下手な義太夫を長屋の店子(たなこ)や店の者にむりやり聞か […]
2018年9月3日
カクテルの「王様」、マティーニの作り方はおおよそジンが「三」に対して、ベルモットが「一」でこれよりもジンの割合が高いものがドライ・マティーニとなる▼ヘミングウェーの小説「河を渡って木立のなかへ」にかなり辛口のマティーニを […]
2018年9月1日
 <天井のあたりに音がしたと思つたとたんに、激しい揺れと家鳴り…そこいらじゆうが埃(ほこり)くさい空気になつた>。十九歳で関東大震災にあった作家幸田文は小説『きもの』で、その時を生々しく描いている▼町に火が上がる中、主人 […]
2018年8月31日
 多くの小中学校で夏休みの終わりが近づき、図書館がいつもの年のようににぎわっていた。およそ四十日間の自由の代償ともいえる宿題と最後まで格闘する子も多いはずだ▼作家安岡章太郎にも格闘の経験がある。小学生の時、夏休みの最終日 […]
2018年8月30日
 世界には日本語に翻訳しにくい言葉がある。カリブ・スペイン語の「コティスエルト」。この一言で、日本語にすれば「シャツの裾を絶対ズボンの中に入れようとしない男の人」という意味になるそうだ。『翻訳できない世界のことば』(創元 […]
2018年8月28日
 笑い声のない家で少年は育った。父親はたびたび家を飛び出し、母親は泣いてばかりいた。息苦しい生活のなか少年が見つけた数少ない楽しみはチャプリンの映画だった▼笑いを商売にする人間は必ずしも笑いの絶えぬ家庭で育つものとは限ら […]
2018年8月27日
 <またしても女房が言ったのだ/ラジオもなければテレビもない/電気ストーブも電話もない/ミキサーもなければ電気冷蔵庫もない>。山之口貘の「ある家庭」。ある家庭といっても貘さんの家のことである▼高度成長期の一九六〇年代前半 […]
2018年8月25日
 台本にある自分の役を見て、声を上げたという。<苗字(みょうじ)のある役だワ>。女優の菅井きんさんだ(著書『わき役 ふけ役 いびり役』)▼農家の娘トメの役で舞台にデビューして以来、苗字なしの役ばかりを演じてきた。だから、 […]