2018年11月25日
 <若き亜細亜(アジア)の黎明(しののめ)に命輝く新日本>。「日本万国博覧会行進曲」の歌い出しである。大阪万博の「世界の国からこんにちは」は知っているが、はて、そんな歌あったかと首をひねる人がほとんどだろう。一九四〇(昭 […]
2018年11月24日
 一人の若者が土をこねているうちに、女の人形ができた。古代の大王は大いに気に入り、たくさんつくるよう人々に、命じる。それは「埴輪(はにわ)」と名付けられた。詩人の茨木のり子さんの創作である。ラジオドラマとして書いた作品『 […]
2018年11月21日
 携帯電話のない時代の話である。作家の山口瞳さんが顔見知りだった出版社の女性社員が会社の外で公衆電話を使っているのを見かけた。後になって、母親が病気で日に何度も電話しなければならなかったと知る▼同じ会社の男性社員。いつも […]
2018年11月20日
 路上で子どもがしくしく泣いている。通りがかった男が声を掛ける。「どうした、えっ、おとっつあんが病気なのにお金がなくて故郷に帰ることができないんだって…」▼気の毒な話に人が集まってくる。男が子どもの持つ大量のカミソリに気 […]
2018年11月19日
 酔った藩士の刃傷事件を反省し、ある藩が禁酒を宣言した。門の前には番屋を置き、酒の出入りを固く見張る。古典落語の「禁酒番屋」である。五代目柳家小さんが酒を実にうまそうに口にする場面が懐かしい▼無論、禁を破る不届き者もでて […]
2018年11月17日
 「進化論」のダーウィンは後悔の言葉を残しているという。<私の仲間たちの生き物に対して…よいことをしてやれなかった>。ウイリアム・デイビス編『ベスト・ワン事典』に教わった▼地中のミミズから赤道直下の鳥たち、さらに植物まで […]
2018年11月16日
 憂うつだった<私>は、一個のレモンを手にした時から、幸せを感じる。梶井基次郎の代表作『檸檬(れもん)』にある有名なくだりだ。<つまりはこの重さなんだな…この重さはすべての善いものすべての美しいものを重量に換算して来た重 […]
2018年11月14日
 米国では、大学一年生のことを「FRESHMAN」(フレッシュマン)と呼ぶ。以下、二年生は「SOPHOMORE」(ソフォモア)、三年生は「JUNIOR」(ジュニア)、四年生は「SENIOR」(シニア)。数字を使わずに表現 […]
2018年11月13日
「政治家に大切なものが二つある」。十九世紀の米政治家マーク・ハナが言っている。マッキンリー大統領の参謀だった人でいわく「ひとつはマネー」。なるほど。「もうひとつは忘れた」。金しかないのか▼お金もそうだが、今の日本の政治家 […]
2018年11月10日
冥土に通じる六道の辻(つじ)と考えられた場所が京都にある。あの世とこの世の境目だ。ここの飴(あめ)屋に毎夜、青白い顔の女が訪ねてきた。一文銭を手に「ひとつ売っていただけませんか」。落語にある『幽霊飴』である▼「どうもあれ […]