犬と暮らした経験のある方ならば、分かっていただけるか。<夫婦喧嘩(げんか)は犬も食わぬ>というけれど、犬はおそらく喧嘩を食うのである。誰かが喧嘩をしている場面を目撃すれば、仲裁役を買ってでるような動きをするし、少なくとも、事の成り行きを心配しているようである▼普段は吠(ほ)えぬ犬が夫婦喧嘩の二人に向かってワンワンと声を上げるという話も聞く。なじみの寝てばかりいる老犬も喧嘩、口論を見れば、つかつかと寄ってきて、大あくびをしてみせる。緊張した空気を和らげようとでもするのか、なかなか巧妙な仲裁法である▼さて、どう気まずい空気を和らげるか。「喧嘩」の当事者であるフィリピンのドゥテルテ大統領が来日した。長年の同盟関係にある米国に対し「決別する」とまでおっしゃった▼その後、ややトーンを落としたが、米国とライバル関係にある中国での発言である。フィリピンの急な心変わりはアジア・太平洋地域の不安材料になりかねず、日本としても<犬も食わぬ>というわけにいくまい▼仲立ちや関係修復役の心得は公平さだろう。ダバオ市長時代、ある事件で米国の捜査当局にフィリピンの主権を無視されるかのような仕打ちを受けたとされるなど大統領にも怒りの「理由」がある▼話を聞こう。風変わりな方にも見えるが、程度の差はあれ、その悔しさが理解できるはずの日本でもある。