「ちちんぷいぷい」。言わずと知れた、子どもが転んでどこかを痛めたときに唱えるおまじないで、続くのは「痛いの痛いの飛んでいけ」▼歴史は古く、徳川家光公の乳母、春日局(かすがのつぼね)が使ったのが起源という説もあるそうだ。漢字で書けば「知仁武勇」。正確には「知仁武勇は御代の宝」であなたは優れた子であり、宝物だからどうぞ泣かないでの意味になろう▼われわれが現在、耳にしているのは国会論戦史上、最悪のまじないかもしれぬ。「印象操作」。それを唱えれば、いかなる悪霊も退散すると信じているかのような最近の安倍首相である▼首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題をめぐる野党の追及に対し「印象操作だ」「(自分への)印象操作でいいかげんなことを言っている」と唱え続け、質問に真正面から答えようとしない▼印象操作といえば、事実を誇張し歪(ゆが)め、相手の評判を落とすようなやり方なのだが、野党は首相と学園理事長との関係を質問しているにすぎぬ。それを印象操作だとすねてしまえば、国会質疑の大部分は成り立たないだろう▼痛いところを擦(さす)る手によって「ちちんぷいぷい」には効果があろう。が、「印象操作」のまじないに効き目はない。時間稼ぎ。ごまかし。それこそ世間の印象を自分で悪く操作している。唱えるたびに「痛いの痛いの飛んでくる」である。