<子供達よ/これが核攻撃から/あなたを守る方法です/ベルの音で先を争って誰よりも早く/机の下にもぐり/ひざまずいた姿勢で床に顔をつけ…>。一九五〇年代、米国の小学校では核攻撃から身を守る訓練が真剣に行われていた。体を丸め、目をぎゅっと閉じ、警報の解除をじっと待つ▼そんな訓練の意味を、デイヴィッド・クリーガーさん(75)は詩で問うた。<これが時速何百マイルの速度で/飛んでくるガラスの破片やその他の物体から/あなたを守る方法です/そしてあなたの眼球を/溶かすこともできる白い閃光(せんこう)から/あなたを守る方法です>(『戦争と平和の岐路で』コールサック社)▼本当の「あなたを守る方法」とは何か。「核時代平和財団」会長として、三十年以上も核廃絶に取り組んできたクリーガーさんたちの問い掛けが今、一つの形になりつつある▼国連で百二十以上の国が交渉を続けていた「核兵器禁止条約」が、ついに採択の時を迎えつつあるのだ。しかし、日本政府は交渉に参加すらしなかった▼国際赤十字・赤新月社連盟の近衞忠〓(このえただてる)会長(78)は、この条約の意義を、本紙への寄稿でこう説いていた▼「私たちには、子供たちが学校の体育館や机の下に隠れ、はかない運命を委ねなければならないような恐怖から自由な世界を選ぶことができます。いや、実際にはそれしか選択肢はないのです」
※〓は火へんに軍