コーヒーなしには一日が始まらぬ、仕事もはかどらぬ…という人は多かろうが、実はミツバチもカフェインが大好きだという▼英国の研究者らによると、コーヒーノキやレモンなどは、花の蜜にカフェインを忍ばせている。それを吸ったミツバチは花の香りを覚える記憶力が倍増し、同じ香りを求め探し回るようになるという▼それだけではない。タバコなどは花の蜜にニコチンを含ませているが、その蜜を吸ったマルハナバチは花の色を素早く覚えるようになることも分かった。植物は、ハチに効率よく花粉を運んでもらうため、カフェインとニコチンを巧みに使っているわけだ▼働き蜂が、コーヒーとタバコの虜(とりこ)…とは微苦笑せずにはいられない発見だが、笑いを消し去るような報告もある。ニコチンとよく似た構造を持つネオニコチノイド系農薬が、ハチたちを薬物依存症にさせているかもしれぬというのだ▼ただの砂糖水とネオニコチノイド系農薬が入った砂糖水を一緒に置くと、ハチは農薬入りのものを選ぶ傾向があった。ミツバチの記憶力を害し、命を縮めるとされる農薬を好んで吸うというのは、立派な中毒ではないか▼欧米では、この種の農薬の規制が強化されつつあるが、わが国では使用が広がっていると聞く。働き手に、禁煙ではなく、喫煙を勧める。ミツバチたちが働かされているのは、そんな職場なのだ。