先日、大型ハリケーン「イルマ」が米国を襲った際、ハリケーンに向けて銃を発砲しようという呼びかけが広がり、当局が絶対にやめてと訴える騒ぎがあった。ハリケーンへの恨み、ストレスも分からぬではないが、詮ない上に危険極まりない。銃社会の歪(ゆが)みを見る思いである▼この話に日本に残る風習を連想する。「風切り鎌」という。屋根や竹ざおの先に鎌をくくりつけて立てる。鎌で風を切って退治するというまじないである▼風におびえ、「風切り鎌」にすがりたい人もいるか。「解散風」のかすかな音が聞こえる人には聞こえるらしい。二十八日召集の臨時国会の会期中、首相が衆院解散・総選挙に打って出るのではという現段階では当てにできぬ観測がある▼北朝鮮の動きを考えれば、選挙どころではなかろうし、解散に値する大義も名分も今はうかがえない。それでも、党利党略だけで、状況を考えた場合、政権支持率が回復に向かい、離党者相次ぐ、民進党が低迷する中、ここが好機と映るらしい。不穏な見立てが永田町のススキを揺らす▼「九月つごもり、十月のころ、空うち曇りて、風のいと騒がしく吹きて、黄なる葉どものほろほろとこぼれ落つる、いとあはれなり」。「枕草子」だが、与党の一部は、「黄なる葉」が野党に見えるのか▼大義なき解散となれば世間の「鎌」がどちらに向くかは分かるまいて。