バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンは一度、NBA(全米バスケット協会)を離れて、プロ野球に挑戦している。一九九三年、三十歳前後のときだから、バスケット選手として脂の乗った時期である▼幼い時、プロ野球選手になると父親と約束していたという理由が泣かせるが、やはりバスケットほどには実力を発揮できず、大リーガーには昇格できなかった。スーパースターといえど、天は二物を与えるほどに甘くはないのか▼ジョーダンはバスケットをやめた上で、野球の道を追いかけたが、この人の場合、同時に二つの道を追いかけるというから野心的というべきか、欲が深いというべきか。東京都の小池百合子知事である。都知事を続けながら、新しい国政政党「希望の党」の代表に就任する意向を示した▼国会議員になるわけではないが、東京都政と国政政党トップの二足のわらじとは、「希望」がどうも「多忙」や「無謀」と聞こえてしまう▼小池さんがトップにならなければ総選挙での得票が期待できぬという新党側の「希望」は分からないでもないが、掛け持ちするのは東京五輪・パラリンピック、豊洲市場移転問題など課題山積の都政である▼都政と新党。どちらの仕事にも集中できない人を、果たして国民、都民は「希望」するか。有権者も天と同じで器用な「二物」を許すほど甘くはなかろう。