小学校四年生の伊藤七瀬さんはピンク色が好きな男の子だ。幼稚園の時、ピンク色のTシャツを着ていたら、女の子に言われたそうだ。「男の子なのに、どうしてピンク色の服なの?」▼なぜそんなことを言うんだろう。お母さんに話すと、こんな言葉が返ってきた。「ピンク色は、女の子の好きな色だと思う人が多いからかもね。七瀬は、女の子が青色やみどり色の服を着ていたら、おかしいと思うかな?」▼今「おかしいと思うかな?」と問わなくてはならないのは、この国の男女格差だ。世界経済フォーラムが発表した最新の「男女格差報告書」によると、日本は百四十四カ国中で、過去最低の百十四位だった▼女性の政治進出が低調で、専門・技術職での女性が少なく、収入の男女差が大きい。そんな状況が改まらぬ根底には、やはり「男は青、女はピンク」式の硬直した考え方があるのだろう▼七瀬さんは二年前、小学校に入ってからも「男のくせにピンクか」と言われた体験をつづり、地元・福島県会津若松市の「男女平等に関する作文コンクール」で、優秀賞に輝いた。その作文は、こう結ばれている。<これからも、同じようなことを言われることがあると思います。でも、こんどからは、自分ではっきりと「ぼくのすきな色なんだ」と言いたいです>▼そういうひと言ひと言が、壁を土台から壊していくはずだ。