広島に落とされた原爆の恐ろしさを、小学三年生は二十九文字で表現した。<げんしばくだんがおちると/ひるがよるになって/人はおばけになる>▼小学五年生は、自らの体験を十四行の詩にした。<いたといたの中に/はさまっている弟/うなっている/弟は、僕に/水 水といった/僕は/くずれている家の中に/はいるのは、いやといった/弟は/だまって/そのまま死んでいった/あの時/僕は/水をくんでやればよかった>(被爆実態調査会編『原子雲の下より』)▼こういう詩を子どもたちに二度と書かせぬために何ができるか。今年はそんな問いに一つの道筋が見えた年でもある。百二十二カ国の賛成で、核兵器禁止条約が国連で採択された▼しかも条約づくりに大きな役割を果たしたのは、日本の団体も一翼を担う国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))。自らの体験を語り伝え続けた被爆者の思いが一つの条約となったのだ▼核保有国や日本など「核の傘」に頼る国は、条約は非現実的だと冷ややかだ。しかし、核の脅威が新たな核を生む連鎖反応が重ねられてきたことを考えた時、「核の傘が平和を守る」という論法がどれほど現実的なのだろうか▼ICANには、あすノーベル平和賞が贈られる。<だまって/そのまま死んでいった>子どもたちにも捧げられる、重い重い金メダルだろう。