空中都市008(ゼロゼロエイト)』と書き出したところで、どれほどの読者がご存じだろうかと心配になるが、辛抱していただきたい。NHKの人形劇(一九六九年放映開始)で「ひょっこりひょうたん島」の後番組である▼原作は、小松左京さん。今となっては「現在」の二十一世紀の未来都市を描いている▼超高層マンションでの生活、自動運転のエアカー、エアクッションカー、動く歩道、月旅行、人型ロボット、買い物はテレビ電話で。当時の子どもは科学の力で進歩した二十一世紀の未来都市に目を見張り、そんな時代が本当にやってくるのかと半分疑い半分信じた▼実際、小松さんの「008」での二十一世紀予想はかなり的中している。エアクッションカーもその一つ。現在でいうリニアモーターカーである。リニアという未来の響きに胸をときめかせた世代は、そのニュースにため息が出るだろう。JR東海が発注したリニア中央新幹線の関連工事をめぐる不正入札があったとされる事件である▼工事を請け負った大林組には、競合他社と受注調整をしていた疑いがかかる。JR東海の担当者がそれに協力し、大林組に工事費に関連する情報を流していた可能性も出ている▼事実とすれば、未来を乗せるリニア入札においても、相も変わらぬ人の欲にからんだ、やり口か。なんだか、あのころ、夢見た未来が傷つけられた気がする。