<♪空気はワインのように澄み、松の香は鐘の音とともに黄昏(たそがれ)どきの風にのる…黄金のエルサレムよ…>。「黄金のエルサレム」は、イスラエルの第二の国歌ともいわれる歌だ▼一九六七年にイスラエルの十九回目の建国記念日を祝うためにつくられ、その年の第三次中東戦争でエルサレムを手中に収めたイスラエル軍の兵士らは、ユダヤの聖地「嘆きの壁」でこの歌をうたったという▼だが、この歌は論議も呼んだ。<♪井戸や泉は枯れ、街道には人けもない>と無人の街のように描いているが、そこにはパレスチナの人々の暮らしがあるではないか、彼らの姿が見えぬのか、と批判が出たのだ▼「黄金のエルサレム」が歌い継がれて半世紀。松の香漂う街に今あるのは、きなくささだろう。中東和平の仲介者を任ずるはずの米政府が「エルサレムはイスラエルの首都」と宣言したため、死者が出る事態となった▼米国に方針撤回を求める決議が国連総会で採択されそうになるとトランプ政権は、賛成する国への援助や国連への資金供出を見直す構えを見せて脅した。「黄金」ならぬ「銭金のエルサレム」である▼イスラエルの新聞によると、「黄金の…」の歌詞をパレスチナの人々も受け入れられるように改めて、ともに歌い継ごうという動きもあったそうだ。国際社会が伴奏すべきは、そういう「黄金のエルサレム」だろう。