「桐島、部活やめるってよ」などの作家、朝井リョウさんが大学の期末試験の思い出を書いている▼問題を見るやいなや、人生で初めて絶句したそうだ。問題の内容が「どこからどう見ても分からない」。同じ試験に臨んだ友人にいたっては本当に涙を流していたというから、よほどの難問だったのか▼オチがついている。受けた試験に問題があった。どの学部の学生でも理解できるレベルのオープン講座のつもりで履修していたが、実は商学部の正規の授業。商学部以外の学生には理解できなくても当然か▼大学入試センター試験の地理Bの中に「ムーミン」がどこの国を舞台にした、アニメーションであるかを尋ねる問題が出た。分からなかった受験生の中にはムーミンへのお門違いな恨み節があると聞くが、朝井さんのあの試験ほど、ちんぷんかんな問題ではあるまい▼確かに、教科書では教えていないだろう。それでも引っかけの「小さなバイキングビッケ」がバイキングと関係するノルウェーと分かれば、ムーミンはフィンランドと気づけそうだ。基礎的な知識を応用できる思考力が試されているのだろう▼作者のトーベ・ヤンソンさんは二〇一四年が生誕百年。当時小欄でも旧ソ連のフィンランド侵攻がムーミンを描く動機になったと紹介した。新聞を読む習慣のある子ならば…と宣伝まがいのことを付け加えておく。