動物の国をペストが襲った。王のライオンは言った。これは天の怒りである。罪を告白し合い、最も罪深い者がその怒りを受け止めなければなるまい。王はまず自分からと、罪もない羊と羊飼いを食べたことを懺悔(ざんげ)した▼キツネはそれは罪ではないと否定した。愚かな羊や動物を支配する羊飼いは食べられて当然だと。その後トラやクマなども懺悔したが、同じ理由で許された。最後にロバの番になった。「おなかが減り、神父さまの土地の草を少し食べたことがあります」。それだ。動物たちはロバに償わせることにした▼フランス詩人ラ・フォンテーヌの寓話(ぐうわ)。似たものを見た気分である。学校法人「森友学園」への国有地売却問題で批判を受けていた財務省前理財局長の佐川国税庁長官が辞任した▼事前の価格交渉を否定していたが、交渉経過を示す音声データが見つかっている。矛盾と疑問の説明を続けていた長官の辞任は当然であり、あのロバと同じとはまったく思わぬ。が、長官の辞任を使って幕引きを図りたがっている者は本当にいないのか▼この件を担当していた近畿財務局の職員が自殺したと聞く。疑惑との因果関係は分からぬが、もはや森友問題は「疑惑」という言葉さえ、生ぬるく感じるほどの醜悪さと恐ろしさを見せている▼事態解明と責任者の追及を。長官の辞任だけでは、その「ペスト」は収まらない。