行政府とは、何のために存在するか。『悪魔の辞典』を書いた米国の作家アンブローズ・ビアスは、こう説明した。「本来は大統領や首相が受けるべき平手打ちや蹴りを、彼らに代わって受けさせるために巧妙につくられた政治的な仕組み」▼今、この言葉の毒を自らの身をしびれさせながら感じているのは、財務省理財局の「一部の職員」の方々だろう。森友学園への不可解な国有地の売却をめぐる決裁文書があろうことか、改ざんされていた▼国会で首相らの関与の有無が取り沙汰されていた時に、政権に不都合がありそうな記述が消され、作り替えられた。その責を負うべきは「一部の職員」だと財務相は言っているが、国民と国会をだまし続けていた責任を取れるのは、官僚などではなく、大臣だろう▼今月五日には改ざん前の文書の存在が国交省から官邸に報告されていたというのに、どの時点で書き換えの事実を知ったかを質問された財務相の答えは、「三月何日だったっけ。十一日か」。この言葉がごまかしなどではなく、本当に事態の推移すら把握していなかったとしたら、それだけで大臣失格ではなかろうか▼英国の作家バーナード・ショー曰(いわ)く、「うそつきが受ける罰は、人に信じてもらえなくなることではない。他人を誰も信じられなくなることである」▼なるほど、あの人たちは、そういう目をしている。