米大統領選挙を戦っていた、リンカーンにひげを生やしてと手紙で提案したのは十一歳の少女だった。「ひげを生やせばリンカーンさんのやせた顔はもっと立派になります」▼その効果か、リンカーンは当選を果たしたが、ひどい損害を受けた人がいる。以前からリンカーンの肖像ポスターを売っていた業者である。ひげを生やす前のリンカーンを描いていたので、絵がまったく似ていないと文句が出て商売が立ちゆかなくなってしまった▼米国のミルトン・ブラッドリーさんという方の逸話だそうだ。この人、実はタカラトミーのゲーム玩具「人生ゲーム」と関係がある。一九六八(昭和四十三)年の発売で今年五十年。幅広い世代があの「人生」の行方を決めるルーレットに夢中になったか▼オリジナルは米国のゲームで、その原型「チェッカード・ゲーム・オブ・ライフ」を一八六〇年に売り出したのが、このブラッドリーさんなのだという。元をたどれば五十年どころの歴史ではない▼「人生、山あり谷あり」。「人生ゲーム」の古いCMを覚えているが、このブラッドリーさんの人生もまさにそれか。リンカーンでの不運な失敗の後、印刷技術を生かし、このゲームを製造したところ、大当たりを取った▼悪いことばかり続かない。そう信じ、へこたれず、真面目にコマを進めていくしか、人の未来は拓(ひら)けぬものらしい。