さて、問題です。「リンゴ村から」(三橋美智也)、「リンゴ追分」(美空ひばり)、「お月さん今晩は」(藤島桓夫)、「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)…。いずれも流行歌の題名ですが、その共通点は?▼古い流行歌ファンなら、すぐにピンとくるだろう。どの曲も「上京」がテーマである。都会へのあこがれ、故郷との別れ。東京への人口流入が加速した高度成長期にはこうした上京ソングが量産され、ヒットした▼北島三郎さんの「函館の女(ひと)」(一九六五年)も上京ソングだったそうだ。<はるばる来たぜ函館>の歌い出しは当初<はるばる来たぜ東京>だったと聞く▼進学や就職に伴う上京のシーズンである。高校を中退した北島さんは東京へ出たいと両親を説得し、何とか許してもらえたそうだ。「実家は貧乏だったが、おやじがベージュのレインコートと、なぜかチョコレート色の革靴を買ってくれた」▼桜の下、アパートに横付けになった引っ越しトラックを散歩途中に見かけた。荷物が少ないので学生さんか。この引っ越しにも新生活への期待と親元を離れる寂しさが詰まっているのだろう。親にもらった、その人にとっての「ベージュのレインコートとチョコレート色の革靴」も積まれているか▼<やればやれそな東京暮らし 嫁ももらっておふくろ孝行>-。同じサブちゃんでも「帰ろかな」を口ずさむ。