「寺内貫太郎一家」などの演出家の久世光彦(くぜてるひこ)さんは五歳にして難しい漢字を読むことができたそうである。読むどころか漱石の「虞美人草(ぐびじんそう)」を丸暗記していた。<紅を弥生に包む昼酣(たけなわ)なるに、春を抽(ぬき)んずる紫の濃き…>「五歳の童子がこれを滔々(とうとう)と諳(そらん)じてみせれば、客はやんやの喝采である。父は満悦である」。五歳とは、驚く▼本と新聞で覚えたらしい。「新聞の字について親に訊(たず)ねれば、みんな教えてくれた。どんな字だって読んでくれたし、その意味や用例まで教えてくれた」▼その効用をもって新聞を宣伝したいわけではない。ただ、その大臣にも新聞を読む習慣を身に付けていただきたい一心から引用した。もちろん、麻生太郎財務相である▼「森友の方がTPPより重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」。先週の国会答弁で、的外れな新聞批判を展開して大恥をかいた。財務省は森友をめぐる文書改ざんを行った当事者である。その最高責任者が反省どころか報道に責任を転嫁するとはあきれるばかりである▼しかも、まともに新聞を読まないで報道批判をしているらしい。今からでも遅くない。新聞で「反省」「責任」「言語道断」の正しい意味ぐらいはぜひとも理解していただきたい▼そんなに手厳しいことを書いても大丈夫かって。心配はないと思う。どう勧めても、その大臣は新聞をお読みにはならない。