トートバッグとは厚い布製などの手提げかばんのこと。丈夫で、口の広いバッグは使いやすく、買い物や、通学などに愛用している方もいるだろう▼「トート」とはもともと英語の俗語で「運ぶ」という意味らしい。このバッグで何を運んだか。氷だそうだ。一九四四年、米国のL・L・ビーンが「アイスバッグ」として発売。それで丈夫にできているのだが、まさか、あのバッグに氷を入れて、運んでいたとは▼十四歳の子どもの部屋のクローゼットで見つけたトートバッグ。その中身を見た母親の驚きはどれほどだったか。入っていたのは十四歳にも、かわいらしいバッグにも似つかわしくない一万円札の束。東京都江東区の中三の少女が友人宅から現金一千万円を盗んだとして窃盗容疑で逮捕された▼子どもと大人のはざまで揺れ動く難しい年ごろとはいえ、どうしてそんなことをとため息が出る。少女が友人宅で大金を見つけなければと詮ないことを想像する▼とったお金は同級生に校舎内や通学路で配っていたという。「仲間外れにされているような気がして」。お金で仲間外れを解消したかったのだろうか。少女の供述が悲しい。お金をもらっていた同級生がいたことが悲しい▼お金で友は買えぬ。小さな出来心が取り返しのつかぬことになる。教えてあげなければならないことがバッグに入りきらぬほどたくさんある。