ウグイスの声は聞いたが、ホトトギスの声の時季にはまだ少し早いかもしれぬ。その鳴き声を言葉で表す聞きなしは「トウキョウトッキョキョカキョク」とか「テッペンカケタカ」▼言い伝えがある。ホトトギスはモズに何かの貸しがあるそうだ。だからあの鳴き方で「返済の餌を木のてっぺん(天辺)にかけたか」と、催促しているのだそうだ。<あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥(ほととぎす)>。人は見かけによらぬものというたとえだが、その鳴き声自体もそうとは聞こえぬ厳しい取り立てだったとは▼そうとは聞こえぬ「甘い声」で子どもたちが犯罪被害者になっている。交流サイト(SNS)をきっかけとした性犯罪などの子どもの被害に歯止めがかからぬ。警察庁によると昨年一年間の被害者は千八百十三人と統計のある二〇〇八年以降で過去最悪である▼SNSで悩みごとを優しく聞くふりをして子どもに忍び寄り、揚げ句、淫行や自分の裸を送信させる「自画撮り」。幼き耳は甘い声のあくどい裏を見抜くことができない▼人を見たら泥棒と思えとは言いたくないが、ことSNSでの甘言蜜語に関しては絶対信じるなと子どもに教えるしかないだろう▼青森、岩手などでは「テッペンカケタカ」ではなく「アチャトンデタ」という聞きなしがある。「あちらへ飛んでいった」。犯罪被害のあちらの暗い空に子どもを近づけてはならない。