肌に心地良い風が吹き、青葉から柔らかい光が漏れる。気分のいい季節を迎えた公園のベンチに腰掛けていると、せわしなく動く影が足元に寄ってきた。パンくずのひとつでもほしげなハトたちだ▼この平和の象徴も、二つの大戦では通信手段として軍に大量動員されている。第一次大戦の激戦地、フランス・ベルダンの戦跡には、一羽のハトを顕彰するプレートがある。包囲され全滅寸前の部隊が、助けを求めて放った伝書バトだ。毒ガスの中を飛び、瀕死(ひんし)で鳩舎(きゅうしゃ)に戻ったという▼少々愚かなイメージのある鳥だけに、哀れさも漂う話だが、帰巣の能力は人間をはるかに上回る▼秘めた能力は、それだけではない。今春出版された『鳥!驚異の知能』(ジェニファー・アッカーマン著)は、鳥の知られざる知性を紹介した驚きの本だが、これによるとハトは一部の統計問題を多くの人より正しく解く。人の顔から感情を読み取る。かなり賢い▼公園で思うのは、彼らは食べ物の独り占めが下手ではないかということだ。くちばしのつくりと大きさのせいだろうか。せっかくパンくずを最初に見つけても、多くは懸命につつくうちに小さくまき散らし、寄って来た仲間に食べられる▼ただ自動的に食べ物を分け合う社会的な仕組みと思えば、これも賢さだろう。世界で繁栄する鳥でもある。やはり平和が似合う。愛鳥週間は十六日まで。