昔、近づくと怖かった場所がある。近所の商店街から駅に向かう道に、いわゆる組事務所があって、回り道をしろと親には言われた。子ども心に恐怖を覚え、一も二もなく従ったものだ▼そこで悪の謀議がなされていたのかは、知り得ないものの、発砲事件がその後起きたと記憶する。市民に被害はなかったが、世の中には、怖い場所があるという戒めは残った▼インターネットの「サイト」という言葉。もともと場所や位置を意味する英語だという。語源となったラテン語のsitusには、さらに付随する意味があるそうだ。放任、汚れ、腐敗などだ▼静岡県藤枝市の山中で、女性看護師の遺体が見つかった事件。残酷な所業に、怒りが込み上げる。同時に、放任されて汚れたサイトで悪意が出会い、膨らんでいく様を思った。女性を監禁した疑いで逮捕された男たちは、ネット上の掲示板サイトで知り合ったという▼またしてもである。多くの不明な点が残されているが、名古屋市で二〇〇七年、闇サイトで知りあった男たちに女性が拉致され、殺害された事件に重なる▼ネットの世界には、さらに大きな闇サイトの世界が広がっていることも知った。近所のどこかではない。目に見えない場所で、悪事が進行しているとしたら、避けて通ることも、察知することも、簡単ではない。事件の解明を願う。事件の怖さを痛感する。