米大統領が居住し、執務を行うホワイトハウスの中に映画館がある。といっても座席は数十席。入場は大統領とその家族やスタッフに限られ、大統領の求めに応じ、どんな作品も上映できるそうだ。最初の上映は一九一五年の「國民の創生」というから歴史がある▼この映画館で最も数多く上映されたのはゲーリー・クーパーの保安官が悪漢四人と対決する「真昼の決闘」と聞いたことがある。レーガン、クリントンの両歴代大統領ともに、この映画のファンでよく上映されたらしい▼ただ、にらみ合いの末、保安官が不利な状況にも勝利する、あの西部劇の上映はしばらく控え、トランプ大統領になるべく見せないようにしていただけないか。大統領にあまり勇ましい気分になってもらっては困る米国と中国の「貿易戦争」である▼米側が中国による知的財産権侵害を理由に約五百億ドル(約五兆五千億円)に相当する中国製品に25%の制裁関税を加えると発表すれば、中国も報復措置として同じ金額分の米国製品に関税を上乗せすると宣言。実施はともに七月六日。その日までお互いの胸に銃を突きつけ合う気か▼値上がりなどで互いの国民を苦しめるだけの貿易戦争に勝者はいない▼しかも世界一位と二位の経済大国。撃ち合えば、相打ちどころか、流れ弾で、世界経済を大きく傷つけるだろう。銃を収めるための話し合いを。