西から昇ったおひさまが東へ沈む-。「天才バカボン」の主題歌で放送開始は一九七一年なので、今でもすらすらと歌詞が出てくるという世代は六十歳近いか。八月二日は赤塚不二夫さんの祥月命日で没後十年という▼あの歌のおかげで、太陽はどちらから昇るかを学んだという当時の子どももいるのではないか。バカボンのパパはいつもでたらめなので歌とは正反対に覚えればよい。だから正解は東という具合▼東にあった台風が西へと進む。こっちの方は笑いごとではなく、身構える。夏場の台風は西から東へと進路を取るものだが、へそ曲がりな台風12号が異例のルートで東から西へと進む▼南の上空に反時計回りの空気の渦があり、その影響によって西寄りのルートを進んだとみられているが、見たこともない台風の進路図が不気味である。先の西日本豪雨の被災地に向かっているのも気掛かりで、どこまでも底意地の悪い台風である。異例な進路に予想もつかぬ被害が心配である▼それにしても異例やら異常という言葉をよく耳にした、この七月である。西日本豪雨に始まって、全国的な猛暑、そしてこの西も東も分からぬ台風。「西から昇ったおひさま」ほどではないにせよ、これだけの異常、異例が続けば何事ならんと心も落ち着かぬ▼同じ赤塚作品でも「シェー」ではなく「これでいいのだ」の普通の夏の空が恋しい。
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