「そよとの風にも震えるが、どんな重荷も運んでいく」はカナダ、「道を作ってくれたら、どこまでだって行くよ」はペルー、「あれば…ただ同然。なくなれば、さあこれほど高価なものはない」はアラブ。日本には「切っても切っても切れないもの」がある。さて何のことでしょう。世界各地のなぞなぞだ▼いずれも答えは水。『世界なぞなぞ大事典』から気象キャスターだった倉嶋厚さんが選び出している(『日和見の事典』)。水のなぞなぞは、古くから世界中にあって、川や雲などを加えれば、数は膨大になるという▼ものを押し流す力があり、なおかつ姿を変えながら、世の中を巡る。水の不思議さは、なぞなぞの題材にふさわしい。世界中にある理由だろう▼倉嶋さんの著書によると、地球上の水の98%は海水で、大気中の水蒸気は、0・001%にすぎない。太陽の熱によって、塩水は蒸発し、蒸留されて循環する。そのおかげで、陸の生物が生きていられる▼その循環が乱れたのだろうか。この夏はすさまじい力となって重荷どころか巨大な岩や土砂を押し流した。炎天下の大規模な断水で、あらためて水の価値も浮き彫りになった。今後も暑さが続けば、場所によって水不足も心配だ▼一日は水の日。被災地の傷が癒えない中で巡ってきた。これのおかげで生きていられるが、時に命を脅かすもの。水の両面を思う。