<いるかいるか/いないかいるか/いないいないいるか/いつならいるか/よるならいるか/またきてみるか>▼谷川俊太郎さんの「いるか」。イルカと「居るか」を掛け合わせた言葉遊びがゆかいで、子どもたちに人気のある詩である▼イルカなら「要るか」の地口にもなるが、そのイルカショー、「要るか」と思ったのかもしれぬが、「要らなかった」のである。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに向けて、最初のテスト大会となるセーリング・ワールドカップ(W杯)江の島大会。開会式でイルカのショーを披露したところ、国際セーリング連盟が「残念に思う」と非難する声明を発表した▼知能の高いイルカを見せ物にすることに対して国際社会にはアニマルライツ(動物の権利)の観点などから強い批判があり、ハンガリーやインドなどはイルカショー自体を禁止している。イルカを神聖な存在と考える人々もいると聞く▼イルカのジャンプで開会式を盛り上げる趣向だったのだろうが、それを見て戸惑う選手らがいることは当然考えておくべきだった。風の変化を見るセーリング競技が、世界の「風」を読み違えた▼テスト大会は五輪本番を想定して選手の動きや会場警備、輸送などを確認するそうだが、この件も大切な教訓になる。こちらがよかれと思ったおもてなしでも、「要るか、大丈夫か」と念を入れたい。