ジム・モリス投手と聞いて、ぴんとくる人は野球ファンでも少ないだろう。大リーグ通算成績は登板二十一試合で、零勝零敗。防御率四・八〇。実働は一九九九年と二〇〇〇年の二シーズンのみ。成績だけなら見るべきところのない投手かもしれぬ▼それでも、その選手が語り継がれるのは、大リーガーになるまでの道程への称賛である。若い時はドラフトに指名されるほどの腕前だったが、腕を故障。高校の先生になったものの、夢あきらめきれず、ある球団の入団試験に挑戦。苦労の末、大リーガーとして初マウンドに立ったときは三十五歳になっていた。普通なら引退する年齢である▼安倍改造内閣の組閣名簿を見て、その投手の半生を描いた米映画の邦題をふと思い出した。『オールド・ルーキー』。十二人が初入閣。しかも、当選回数を重ねながらも、なかなか大臣に手が届かなかった方々が目立つ▼初入閣の適齢期といえば、衆院議員なら当選五、六回ぐらいだろう。今回は当選七、八回での初入閣が七人。失礼ながら「出世」が少々遅れていた人たちといえるだろう▼自民党の「在庫一掃処分市」と皮肉ってもいいが、本日はやめておく。良き仕事をと言っておく▼大臣が夢だったわけではあるまい。大臣として、国民のために何をなすかを夢見ていたはずである。オールド・ルーキーたちの仕事を厳しく見守るとする。