米国の心理学者が卒業アルバムを使い、変わった研究をしている。卒業アルバムの写真を何百枚と集めて、その笑顔を分析する。笑っているかどうか。それは満面の笑みか▼笑顔の度合いと写真の人物の結婚生活を検証してみたところ、あまり笑っていなかった人の離婚率は満面の笑みの人の五倍に上ったそうである。あくまで、米国人を対象にした調査で日本人に当てはまらぬだろう。卒業写真などを撮る際、日本人は米国人ほど歯を見せて笑わないものだ▼そこに満面の笑みはあるのか。心配しているのは、二〇二一年春以降に卒業する今の大学生たちの卒業アルバムの顔である。経団連は新卒学生の就職活動の解禁時期などを定めた指針を二一年卒業の学生から廃止することを正式に決めた▼新たな指針は今後、政府主導の協議で決定するが、突然、ルールが変わると宣言されても大学生や家族は戸惑うばかりだろう。何といっても基本的には六十年超続いたルールである▼将来的には新卒一括採用制度の見直し論議が起きる可能性もある。功罪半ばする日本独特の制度で時代に合わぬところもあるが、極端なことをすれば、学生から笑顔を消しかねないだろう▼新ルールが適用される学生の負担が増えるようなことはやめていただきたい。関係者はアルバムを開くべきだ。自分が就活に奔走した不安な日々を思い出されたい。