「助(すけ)っ人(と)」という言葉を字引で見れば「加勢する人」「助ける人」であって喧嘩(けんか)や果たし合いの当事者そのものではない。あくまで第三者、部外者ながら助ける人である▼股旅もので雇われた渡世人が「あんたには恨みはないが、これも浮世の義理…」と切りかかっていく場面がよくあるが、助っ人は雇われているだけで恨みも戦わねばならぬ理由もあまりない▼日本のプロ野球の外国人選手に対し「助っ人」という呼び方をしばしば使った時代があった。かなり失礼で外国人選手が本来の意味を知れば、ショックを受けただろう。よそよそしい「助っ人」なる言葉とは無縁の名投手が亡くなった。南海などで活躍したジョー・スタンカさん。八十七歳▼一九六四(昭和三十九)年のシーズンに二十六勝をマークし、リーグ優勝の立役者となる。阪神との日本シリーズでは今では考えられぬ三完封勝利。南海に日本一をもたらし、鶴岡一人監督の次に胴上げされている▼チームのためならば連投をいとわぬ心意気。「スタンカは日本人の心を持っている」とは鶴岡監督の当時の言葉である▼六一年、巨人との日本シリーズでは明暗を分けたボール判定をめぐって円城寺満球審にかみついた。<円城寺あれがボールか秋の空>。どなたがつくったか知らぬが、当時の句。「助っ人」ではないから、その投手の不運が切なかったのだろう。