米フォーク・ロックのママス&パパスが一九六六年にヒットさせた曲、「夢のカリフォルニア」。題名だけを聞けば昔の海外旅行の宣伝文句みたいで、明るく健康的なイメージがわくが、歌の内容はかなり寂しい▼舞台はカリフォルニアではなく、おそらくニューヨーク。季節はカリフォルニアに似合いそうな夏ではなく、枯れ葉舞い散る冬。その寒さに震えながら、暖かく、落ち着けるカリフォルニアに思いをはせるという望郷の歌である。「カリフォルニアを夢見る。こんな冬の日は」▼この晩秋から冬に限れば、カリフォルニア州に夢を抱きにくいかもしれぬ。同州北部を襲った史上最悪規模の山火事である。火災自体は恵みの雨で落ち着いてきたが、今度はその雨が洪水や土石流を引き起こす危険が出てきたというから悪夢である▼同州でしばしば発生する大規模な山火事の背景として地球温暖化による異常気象を疑う見方は強い。今回でいえば、秋の雨期の到来が遅れ、山が乾燥し燃え広がりやすい状態になっていたと聞く▼このままだと地球温暖化の影響による山火事や猛暑などで年間数十兆円規模の経済損失が出る-。最近の米連邦政府の専門委員会の報告書である。温暖化を笑うトランプ大統領への勇気ある諫言(かんげん)なのだろう▼大統領がこれで目を覚まし、温暖化対策に取り組むことと穏やかなカリフォルニアを夢見る。