グラウンドなどをならす整地ローラーを「コンダラ」と呼ぶ人がいるそうだ。そう聞けば、語源を知る世代は噴きだしてしまうかもしれぬ。それは、誤解に由来する▼<思い込んだら試練の道を>。昭和四十年代にヒットした「巨人の星」の主題歌。歌いだしの<思い込んだら>の部分をどういうわけか、<重いコンダラ>と解釈し、整地ローラーのことをコンダラというのだろうと、それこそ思い込んでしまったらしい。時代を経て「コンダラ」という俗称が定着していたとはおもしろい▼こんな勘違いや思い込みなら笑い話にもなるが、こちらはひどい<思い込んだら>である。警視庁は最近、野方署が二十代の男性を窃盗容疑で誤認逮捕したことを発表したが、その原因は防犯カメラ映像による思い込みである▼カメラに写った犯人とみられる男とこの男性の特徴がよく似ていたらしい。男性は否認したが、警察は映像が動かぬ証拠とばかりに犯人だと思い込んでしまったようだ▼指紋採取などの裏付け捜査などは行われていなかったとは思い込みや先入観の怖さだろう。画像の詳しい解析によって、ようやく別人と分かった▼映像はウソをつかぬ。が、思い込みや決めつけというゆがんだフィルターによって人は事実ではない映像を見るのか。こんな失敗を二度としない。こっちの誓いの方は、強く思い込んでいただきたい。