テニスを題材にした山本鈴美香(すみか)さんの「エースをねらえ!」の「週刊マーガレット」連載開始は一九七三(昭和四十八)年というから半世紀近く前になった。当時、テニスの知識、情報は今ほど一般的ではなく、15、30、40という得点の進み方や0点を「ラブ」という言い方もあの作品で初めて知ったという世代もあるだろう▼才能を見いだされた高校生の岡ひろみの成長とともに作品全体には世界に通用する、日本勢プレーヤーを育成するという願いが描かれている▼物語の結末はどうなったか。岡が世界に向けて旅立つ場面で終わっており、その後の活躍は描かれていない。漫画とはいえ、さすがに世界の名選手を相手に勝利を重ねる場面は描きにくかったのかもしれぬ。それが当時の日本勢の実力だった▼漫画から四十六年後、大坂なおみが全豪オープンで優勝を果たし、世界ランク一位に上り詰めた。漫画でさえ、描くことをためらわれた日本勢による世界一。それを大坂が自らのラケットで描いてみせた。想像力の世界を超えた快挙に拍手を送る▼全米オープンに続く四大大会での連勝である。技術、強さ、精神力。大坂は勝って当然の選手に成長した-ともう書いてしまおう▼あの漫画のファンとしては大坂と岡、なおみとひろみと名前が少々似ている気がしてならない。次の四大大会は五月。「大坂、全仏もねらえ!」

 
 

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