落語家の林家たい平さんが雨宿りをしていたときの話だそうだ。かなり強い雨だった。たまたま茶髪の「兄ちゃんと姉ちゃん」も雨宿りしていた。「兄ちゃん」が強い雨にこう言った。「すげえなぁオイ。飛ぶ鳥を落とすような勢いの雨だな」▼「おまえは何を言っているんだ」。横で聞いていてそう思ったそうだ。慣用句の「飛ぶ鳥を落とす勢い」は人気や権勢が盛んなさまのたとえで雨の勢いにたとえるのはおかしい。たい平さんによると、確かにその雨、「飛ぶ鳥を落とすような勢い」だったそうだが▼「恥の上塗り」という慣用句の意味を取り違える人は少ないだろうが、ひょっとして厚生労働省は誤解していないか。毎月勤労統計の不正調査問題の成り行きについ空想してしまう▼調査の公正性を守るため、外部委員会がこの問題を調べる触れ込みだったが、不正に関与した職員に聞き取り調査をしたのは同じ身内の職員。耳を疑う。これでは信用できぬと突き返されてもしかたがあるまい。厳しい調査で省内の立て直しを図るという決意も気迫も感じられぬ▼不正という恥の上に重ねた甘い調査という恥。これこそ「恥の上塗り」に違いないが、厚労省は不正という「恥」の真相を隠すため甘い調査で「上塗り」をしたかったのではなかろうな。そう勘ぐりたくもなる▼一部を再調査する。恥を重ねなければよいのだが。