兄や姉からの「お古」「お下がり」。今聞けばどこか懐かしい気持ちになるが、それをあてがわれた当時の少年少女はやはり面白くなかったか。「ポーの一族」「トーマの心臓」などの漫画家の萩尾望都(もと)さん(68)が「お下がり」の思い出についてこんなことを書いている▼萩尾さんにはお姉さんがおり、入学式などではお下がりばかりを着させられたそうだ。当然ながら、自分の妹にも引き継がれるのだろうと思っていたが、「もう着られないね」と新しい服を買ってもらえたそうだ。自分だけが「お古」。ちょっぴり恨めしげである▼こっちは約四十年も使い回していたというから、お古もお古の話題である。米航空宇宙局(NASA)の宇宙服。一九八一年に導入以来、使われ続けた結果、老朽化と不足が心配されている▼国際宇宙ステーションの船外活動などでの雄姿を見れば、最新の科学技術によって製作されているのだろうと想像していたが、博物館に入っていても不思議ではない古い服とは驚く。新型宇宙服の開発の遅れが「お古」の原因だそうだ▼使い捨ての今の時代にあって何とももの持ちの良い話で宇宙服の耐久力に感心する一方、老朽化による事故も相次いでいると聞けば、さすがにもう限界である▼新型の開発が待たれる。その「おニュー」の生命維持装置をひがむような宇宙飛行士は一人もいないだろう。