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旧大名家に生まれて伯爵となり、戦後は横綱審議委員会の初代委員長を務めた酒井忠正氏は相撲の妙味の一つは、「勝つか負けるかの土俵の上で恩を返し返される」ことだと説いていた▼酒井氏がその好例に挙げたのが、大横綱・太刀山の恩返し […]

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<間もなく新宿行き快速電車がまいります。そのまましらばくれてお待ち下さい><車内では席をゆすり合いましょう>。井上ひさしさんの作品には言葉の病(無論、想像上の)にかかる人がよく描かれる▼「しばらく」を「しらばくれて」と口 […]

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<メトロを降りて階段のぼりゃ 霧にうず巻くまぶしいネオン いかすじゃないか 西銀座駅前>-。いかすじゃないかのフレーズがいかすじゃないか。フランク永井さんの低音がよみがえる「西銀座駅前」▼忘年会シーズンはまだ先とはいえ、 […]

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 博打(ばくち)の借金でどうにもならなくなった左官の長兵衛。見かねた娘のお久が吉原に身を沈め、五十両の金をこしらえる。長兵衛が金を受け取った帰り道。吾妻橋から隅田川に身を投げようとしている男がいる▼聞けば、お店の集金五十 […]

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科学者は「頭がよくなくてはいけない」。もっともだが、その後に「同時に頭が悪くなくてはいけない」と続けば、うん?となる。そう書いているのは物理学者の寺田寅彦である(『科学者とあたま』)▼この場合の「頭が悪い」とは「効率」や […]

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「赤い羽根」の共同募金運動が始まったのは、七十年前のきょう十一月二十五日のことだ。もっとも最初の年に募金した人に配られたのは、稲穂をデザインした金属製バッジ。「赤い羽根」が登場したのは翌年からだが、すったもんだのやりとり […]

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「幽霊病」にかかると、体が少しずつ消えていく。まず指、両手、両腕。両脚。そして声までも。かろうじて口から母音だけを絞り出すことができる。心配させてしまったか。野田秀樹さんのお芝居『足跡姫』である▼「い、い、あ、い」。その […]

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水からガソリンをつくる。そう聞けば、だれもがばかなとおっしゃるだろうが、この詐欺に引っかかりそうになったのが、旧帝国海軍である。山本一生さんの『水を石油に変える人』(文芸春秋)に詳しい▼詐欺の触れ込みによれば「水に七種類 […]

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「大根、芋、ねぎ、しいたけなどの野菜がたっぷりと入った葛(くず)仕立ての汁へ口をつけた平蔵が、『うまいな。(中略)おぬしがひいきにするだけのことはある。躰中(からだじゅう)が一度にあたたまってきたぞ』」▼池波正太郎の「鬼 […]

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「なんだい、この鰻(うなぎ)は三年、舌の上にのっけてもとろっとなんてこないよ」「このお新香(しんこ)、よくこれだけ薄く切れたもんだねえ。薄くて立ってられないから、お新香同士が力を合わせ、支えている。見ていて、涙ぐましいよ […]

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