内戦が続く南スーダンやアフガニスタン。エボラ出血熱が猛威をふるった西アフリカ。国際的な医療支援団体「国境なき医師団日本」会長の加藤寛幸さん(51)は、世界各地の過酷な現場で働いてきた▼そんな加藤さんが「あれほどすさまじいとは…」と語るのは、ミャンマーからバングラデシュに逃れてきたロヒンギャの人々が置かれている状況だ▼この二カ月ほどで、五十万を超す人々が難民となった。見渡す限り広がるキャンプは、竹の骨組みにビニールシートをかけただけで、床もない。加藤さんが衝撃を受けたのは、そこで立ちつくす無数の人々の顔だったという▼「皆が皆、同じ表情なのです。不安を一切隠すことない顔。白目が大きいというか、ただ、ぼう然として…。どんな体験をすれば、あれほど多くの人がああいう顔をするのか」▼診療所を開くと、何百人もの列ができた。人々はせきを切ったように身の上話をしたという。村を焼かれ、逃避行の中で夫を殺され、その直後に出産したという若い母親。幼子を抱き「この子の母は殺された。どう育てれば…」と泣いていたおばあさん▼そういう人々が、飢えや病気の恐怖にさらされている。「感染症の予防など、今やらなくては手遅れになります」と加藤さんは医療支援のための寄付を呼び掛けている。(国境なき医師団日本 電話0120-999-199)