ロシアのマトリョーシカ人形は一九〇〇年のパリ万国博覧会に出品され人気となったのがきっかけとなり、国内のあちこちで作られるようになったというからその歴史はさほど古くない▼こんな説がある。あるロシア人が入れ子式の人形を日本で見つけ、それがマトリョーシカのヒントになった-。日本の「親戚筋」だったのか▼禁止薬物を使用し、身体を強く、大きくするドーピングをめぐる問題に、最初の小さな姿が大きくなっていく人形のことを考えてしまう。国際オリンピック委員会はロシアに対し、国家ぐるみのドーピング不正があったとしロシア選手団を来年二月の平昌冬季五輪から除外することを決定した▼潔白が証明された選手は個人資格で出場が認められるが、一国をそのものを除外するとは極めて厳しい。それほどロシアのやり方が許せなかったのだろう▼「違反薬物」。その上に「偽装」、その上に「国家主導の隠蔽(いんぺい)」。あの人形でいえば、幾重もの不正の「外柄」を次々に着込んでいったか。ドーピングは卑怯(ひきょう)な上に危険である。選手への危険を承知で国が主導していたとすれば、国家の威信、名声に目がくらんでいる▼ロシアには平昌五輪ボイコット論があるが、むしろ個人選手を積極的に派遣することを勧めたい。屈辱を晴らしたいのならドーピングなしでも勝てることを証明した方が早い。堂々と。