「言葉のダシのとりかた」に「サンタクロースのハンバーガー」、それに「絶望のスパゲッティ」のつくりかた…。長田弘さんは、実に愉快なレシピを詩にした▼たとえば「言葉のダシのとりかた」は、<言葉が鍋のなかで踊りだし、/言葉のアクがぶくぶく浮いてきたら/掬(すく)ってすくって捨てる。/鍋が言葉もろともワッと沸きあがってきたら/火を止めて、あとは/黙って言葉を漉(こ)しとるのだ>といった具合だ▼そんな「言葉の料理の達人」が「びっくりするほどシンプルでいて、びっくりするほど奥行きの深い本」と評した料理本がある。崔智恩(チェジウン)さんの『食べるクスリ おかゆ』だ▼長田さんが「あまりのおいしさにうならされた」というレシピは…。ジャガイモ一個を一・五センチ角に切り、玉ネギ四分の一はみじん切りに。これを茶わん半分のごはんとともに、煮干しでとっただし三カップに入れ、まず強火、煮立ったら弱火にして二十分。塩少々で味を調えれば、胃をすっきり楽にするというジャガイモのおかゆ二杯分の出来上がり▼つくってみれば、なるほど、一つ一つの素材がやさしく響き合い、詩人が「ものの感じ方、考え方を深いところで変えてしまう」とまでほめたのも、よく分かる▼きょうは、正月七日。七草がゆの日なのに、七草を買い忘れた、わざわざ買って作るのは、どうも…という人は、ぜひお試しを。