2018年1月17日

<風邪の大安売り>。街角でそう書かれた紙切れを見つけたとしても手に取らない方がよいだろう。何のことかといえば、風邪を治すためのかつてのおまじないだそうだ。常光(つねみつ)徹さんの『しぐさの民俗学』の中にあった▼家族の中に風邪をひいた者が出た場合、身内の人間が<風邪の大安売り>と書き、わずかなお金を包み、それで病人の頭をさすりながらこう唱える。「風邪の神様、俺(の)家ではごちそうができないからごちそうのある家へ行っておくれ」▼この包みを通りに捨て、後ろを振り向かないで帰ってくる。誰かが拾えば、その人に風邪がうつり、病人は回復する。ちょっと自分勝手な気がしないではないが、それほど風邪がおそろしかったのだろう▼<インフルエンザの大安売り>。日本中にその紙包みが落ちているらしい。国立感染症研究所の集計によると元日から七日の一週間でインフルエンザの患者数は約百二十四万人。前週より二十万人増えている▼ピークは一月下旬から二月というので注意したい。そういえば電車内でせきをしたところ隣にいた女性が席をそそくさと移動していった。少し傷ついたが、これもしかたがないか▼マスクの着用、手洗い、うがいの励行は当然のこと、かかった場合はきちんと外出を控え、養生するしかないだろう。あのまじないと違い、誰かにうつしたところで回復しない。