「コールド・ターキー(冷たい七面鳥)でたばこをやめたんだ」。英語にこんな言い方がある。初めて聞いたときは、見当もつかなかった。冷たい七面鳥の肉を食べると、たばこをやめられる効果でもあるのか▼もちろん、そんなはずはなく、意志の力によって「すっぱりとやめる」という意味である。麻薬の禁断症状に、肌が七面鳥の皮膚のように粟(あわ)立つということがあるそうでそこから禁断症状が出るほど急激に、すっぱりと、やめるの意味にもなったようである▼「コールド・ターキー」というわけにはいかないのか。厚生労働省が公表した新たな受動喫煙対策の案である。飲食店での原則禁煙はけむに巻かれ、喫煙を例外的に認める店の対象を大幅に拡大させる内容となっている▼この案だと都内に限れば、九割超の飲食店で喫煙が認められるという試算もあると聞く。事実なら完全な骨抜きである▼飲食店やたばこ業界への配慮は理解できるが、国際基準と比較しても大甘で、禁煙でいえば、やめるといいつつ、一日何本かは許し、徐々に減らしていけばいいというやり方に似ている。禁煙に取り組んだ人なら、よくご存じだろう。この甘い方法ではやめるのはかなり難しい▼「コールド・ターキー」は苦しかろう。一時的な影響もあるだろうが、挑まなければ、飲食店での全面禁煙はいつまでたっても目標のままである。