幼いとき、お世話になった人はどれぐらいだろう。今も読み継がれる中川李枝子さんの童話「いやいやえん」(絵・大村百合子さん、福音館)。「ちゅーりっぷほいくえん」の一室に立派な船が現れる場面がある。子どもたちが積み木を囲むように並べ、その中に机やテーブルを置く。船の出来上がり。これに乗船し、クジラを見つける航海に出る▼想像力あふれる子どもたちは何かを何かに見立てるのが得意である。日常的に目の前にある物を夢の道具や乗り物に変身させる。並べた積み木は船となり、風呂敷は正義の超人のマントに、三輪車は飛行機となる。どなたにも記憶があるだろう▼五つの男の子にはドラム式洗濯機がいったい何に見えたのだろう。痛ましい事故である。堺市の住宅で男の子が洗濯機の中に閉じ込められてしまい亡くなってしまった▼丸みのある透明の窓や数々のボタン。ドラム式洗濯機は大人の目から見ても未来的な魅力があり、どこか「宇宙船」を思わせる形をしている▼子どもなら魅了され、その中に入りこんだとしても不思議ではない。本来なら、ほほ笑ましい子どもの想像力も時に危険な「見立て」をする▼子どもの想像力にどう対応し見守るか。やはり、カギは想像力である。子どもがこれで遊ばないか。危険はないかに思いをめぐらせ、「大人の想像力」でもう一度身の回りを点検したい。