<24時間タタカエマスカ>が流行語大賞の銅賞に選ばれたのは、元号が平成に変わった年のこと。<♪黄色と黒は…>と歌う栄養ドリンクのCMソングが大ヒットしたのだ▼世はバブル景気に浮かれていたが、KAROSHIが海外メディアで紹介され始めたのも、このころ。膨らむ一方の日本の貿易黒字に、欧米からは「過度な長時間労働で安い商品をつくっているのはアンフェア」と批判が出た▼あれからずいぶんたち、事態は改善されたかといえば、正規労働者の労働時間は、あまり変化がないという。過労死は止まらず、政府は「働き方改革」の旗を掲げて対策に乗り出したものの、どうも、あやしい▼改革の柱の一つは「裁量労働制」の拡大だが、これは働き方を労働者の裁量に任せ、残業代は実際の時間にかかわらず定額で払う制度。だから、長時間労働を増やすことになるのでは、と指摘されている▼そんな懸念を払拭(ふっしょく)するために政府は、一般の労働者より裁量労働で働く人の労働時間が短いことを示す調査結果を持ち出したが、その中身をよく見れば、一般労働者の中に「一日の労働時間が二十三時間超」だという人が何人もいたというから、<本当に、24時間タタカエマスカ?>と歌いたくなる▼それにしても、こんな荒唐無稽な根拠を持ち出してまで進めようという「働き方改革」とは、誰のためのものなのか。