<泣きそうで泣かない坊や春嵐>は、永六輔さんの句。そんな坊やが手足をばたばたさせながら大泣きしたような、きのうの春の嵐▼列島各地で春一番が吹き、ところによっては、夜明けの闇をごろごろと春雷が揺らした。二千句余に及ぶ永さんの句を編んだ『六輔五・七・五』(岩波書店)を開けば、こういう句もある。<春雷や遥か宇宙の独り言>▼何とも気宇壮大でユーモラスな句だが、実際のところ、雷と宇宙には、知られざる関係があることが分かったという。『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』(化学同人)の著者で宇宙気候学者の宮原ひろ子さんらは、過去四半世紀の気象データから、夏場の雷の発生状況を調べて、太陽の動きと照らし合わせた▼そうして浮かび上がったのは、およそ二十七日でひとまわりする太陽の自転の周期と雷が発生する周期が一致しているという意外な事実。黒点が増えるなど太陽の動きが活発になれば、雷の発生も増えていることも分かったという▼その詳しい仕組みの解明はこれからだというが、地球に降る宇宙線の量は太陽の活動で左右され、宇宙線の量は雲の発達とつながりがあるとされる。雷は、「宇宙と地球のおしゃべり」かもしれぬのだ▼<天と地と明日があって下萌る>も、永さんの句。天と地をつなぐように、雨が降り、稲光が走って春本番。芽吹きのときだ。