「焼野の雉(きぎす)、夜の鶴」とは親が子を思う情の深さのたとえである。鶴は寒い夜、翼を広げわが子を温める。キジは巣のある野原に火が付けば、自分の命も投げ捨てヒナを助ける。科学的根拠はともかく、日本人はキジにそんなイメージを持っていた。<父母のしきりに恋ひし雉子(きじ)の声>は芭蕉である▼子を大切にする印象の一方で、その鳴き声や羽音を組み合わせた言葉はずいぶんと無愛想で冷淡である。なんのことかといえば「けんもほろろ」▼人の頼みや相談を冷たく拒絶するさまをいう、この言葉、キジの性質というよりも、「突(つ)っ慳貪(けんどん)」の「慳」とのシャレからきているという説があるそうだ▼オスのキジは春になると一層、声高く鳴くそうだが、財務省あたりからも大きな鳴き声が聞こえる。「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書が書き換えられたとされる疑惑。国会の追及に対し六日、省内の調査状況を報告したが、その内容は書き換えの有無を一切明らかにしておらず、「けんもほろろ」のゼロ回答である▼大阪地検の捜査に影響を与えたくないというのが、とぼけた報告の理由らしいが、キジも鳴かずばのだんまりで追及をかわせると思っているとすれば、甘い。野党は無論、自民党からの批判も強まる▼真相を解明する気配さえ感じられぬ財務省に向かって、国民も大声で鳴く。「嫌(けん)、嫌(けん)」と。