時間を自由に行き来できるタイムマシンを一回だけ使えるとしたら…。この手のアンケートをすると、だいたい、未来よりも過去を選択する人が上回るそうだ▼その人の年齢にもよるか。子どもたちはタイムマシンで自分の将来を見たがり、反対に大人は過去へと戻りたがると聞いたことがある▼確かに、ある程度の年となれば、時間旅行をするまでもなく、自分の将来は予想できるし、見たくもないという人もいる。そんな未来よりも過去の自分や、今は亡くなってしまった親や友人に会いたいというのはよく分かる。過去の失敗を「あの時」に戻ってやり直したいという人もいるか▼昭和の日である。法律の趣旨によると、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日らしい。暗い戦争にもかかわらず、近くて遠い昭和に心をくすぐられる人は多いだろう▼脚本家の山田太一さんが過去の魅力について書いている。人がタイムマシンで過去へ行きたがる傾向とも関係があるかもしれぬ。「ノスタルジーとは、過去のいいとこ取り」なのだそうだ。つまりは苦しいこと、悲しいことは忘れ、良いことだけを思い出し、昔は良かったとなるらしい▼きょう、昭和の「明」を懐かしむとしよう。同時に昭和の「暗」についても頭に置いておかなければ「国の将来に思いをいたす」ことにはなるまい。