小学校の通学路沿いに住んでいるので朝はにぎやかである。子どもの声がいぎたなき、わが耳に心地良い。「ジャイアンをこらしめなくちゃ」「そうよ、そうよ」-。女の子たちの突拍子のない会話に何があったんだろうと笑いながら想像する。クラスにちょっと横暴な男の子でもいるのだろうか▼「友だちが待っているでしょ。早く行きなさい」。父親の叱る声に女の子が「ヤーナコッタ、ヤナコッタ」と節をつけて言い返すのもおかしい。通学路の音は楽しい▼七時四十分になると、通学路に「ジャンケンおばさん」がやって来る。学校に向かう子どもたちにジャンケンをせがむ。ジャンケンポン。勝った、負けた。そして「気をつけてね。いってらっしゃい」と声をかける▼十数年は続いていらっしゃるのではないか。「おばさん」は子どもを喜ばせながら、見守っている▼なるほど、これなら子どもを見守りつつも、いかめしく監視している雰囲気にはならぬか。失礼ながら、「おばさん」の年齢も超えていらっしゃる。しんどい日もあろうに、通学路に目を光らせる、たのもしいお人である▼新潟の小学二年生が殺された、いたましい事件のことを書かねばならぬ。容疑者の男がようやく逮捕された。下校途中の悲劇であったか。憤りの一方、子どもを見守る人の目のありがたさをあらためて思う。目を、声を増やしたい。