俳優の高倉健さんはウナギを食べるのが苦手だったそうだ。理由がある。小学生の時に肺の病気になり、一年間休学した。お母さんは病に伏せる高倉少年に毎日毎日、ウナギを食べさせたそうだ▼なんとか滋養をつけさせ、元気にしたい。そう願う心はありがたいと思ったそうだが、さすがに毎日となると「つらかった」。それで苦手になってしまったと書いていらっしゃる▼お母上の愛情の深さを思う一方で、ウナギを好物とする人ならば、その味がだめとは何ともったいないと考えるか。それをはるかに上回るもったいないウナギの話がある。環境保護団体グリーンピース・ジャパンによるとニホンウナギなどのかば焼きが昨年、捨てられた量は、なんと二・七トンに及ぶそうだ。あくまで確認できた量であり、実際はもっと多くのウナギが捨てられているかもしれない▼絶滅が心配されるニホンウナギである、不漁だ、値上がりだと大騒ぎになるわりに、その裏側ではさばききれぬまま、大量に捨てられているとはもったいないを通り越して愚かしい話である▼人の口に入らず、味をほめられることもなく、ただ捨てられているとすれば、そのウナギは殺され損である。絶滅を食い止めるためにも流通、消費の在り方を見直す必要があろう▼健さんのセリフではないが、ただ「死んで貰(もら)います」だけでは、ウナギも浮かばれまい。
【大図解】
減らせるか 食品ロス・廃棄(No.1309)
日本では年間2775万トンの食品が廃棄されています。これは全食品等の約3分の1にも当たります。このうち、食べられるのに廃棄されている食品が621万トンにも及んでいます。世界でも同様に重量換算で約32%の食品が廃棄されており、大きな問題になっています。このため国連は2030年までに1人当たりの食品廃棄物を半減させる目標を掲げています。