泣きっ面にハチ、踏んだり蹴ったりなど凶事が重なることを意味する日本語の言い方は多いが、英語の慣用句は雨と関係する。「IT NEVER RAINS BUT WHAT IT POURS」。「降れば土砂降り」と暗記した人も多いだろう▼往年の米女優ジュディ・ガーランドが古い映画で同名の曲を歌っている。朝、ベッドで転び、つま先をぶつける。顔を洗えば、石鹸の泡が目に。タオルも見つからない。髪形も決まらないし、朝食でジュースをこぼして服も台無し▼歌には同情するが、こっちの話は不運が重なった結果だけではあるまい。台風21号の影響で関西空港が冠水し、空港内に利用客や従業員ら約八千人が取り残された▼潮位の高い時期に「非常に強い台風」。開港以来の強い風。それに流されたタンカーが空港の連絡橋に衝突して、橋は通行不能に。確かにいろいろ重なった。その日は開港記念日だったというおまけもついた▼が、この「踏んだり蹴ったり」は本当に防げなかったか。以前から地盤沈下が心配された空港でもある。高い潮位への備えや、一本しかない連絡橋に万が一が起きた場合の対策は十分に練られていたか疑問もある▼「想定外の大きさの台風でして」の言い訳では、同じことの繰り返しになるだろう。異常気象で、「降れば数十年に一度の土砂降り」となる想定外の昨今である。