「進化論」のダーウィンは後悔の言葉を残しているという。<私の仲間たちの生き物に対して…よいことをしてやれなかった>。ウイリアム・デイビス編『ベスト・ワン事典』に教わった▼地中のミミズから赤道直下の鳥たち、さらに植物まで、実に幅広く、生物を研究した生物学者である。人類史に残る成果を人にもたらした半面、生き物にはお返しができなかった。そんな思いだろうか▼それでは、われわれは、生き物に何を返しただろう。世界自然保護基金(WWF)が最近発表したリポートに驚く。一九七〇年から四十年余りで地球上の脊椎動物の数は、60%も減っているのだそうだ▼特に中南米が顕著なのだという。生息環境が悪化したり、失われたりというのが大きな理由だ。気候変動もそこに加わる。リポートによれば、地球が「大加速時代」に入っているのだという▼人口、水やエネルギーの利用量、漁獲の量、消失した熱帯雨林の広さなど、環境に厳しい多くの要素がそろって、過去にない急な右肩上がりを示している。野生生物の急減はその結果だ▼同じ問題をテーマにする生物多様性条約第十四回締約国会議(COP14)もエジプトで開かれる。さんざん生き物の世界を利用してきたわれわれに、どんなよいことができるのか。これまでの不明を反省しつつ、加速すべきは危機意識だとわが身に言い聞かせる。