明治、大正の時代に、風刺の効いた歌で庶民の心をつかんだ演歌師の添田唖蝉坊(あぜんぼう)は、「当世字引歌」の中で、こう歌っている。<「空前絶後」とは「タビタビアルコト」で 「スグコワレル」のが「保険付」…「マネゴトスル」のが「新発明」…「賃銀労働者」は「ノーゼイドウブツ」>▼文明開化の世の中は、立派でありがたそうな言葉、新しい物でいっぱいだ。いい時代になったようには見えるけど、その看板と中身、なにか違っていませんか。字引に見立てて、世相を突いた▼当世の字引歌なら、こう歌ってみたくなろうか。「多用途運用護衛艦」は「コウクウボカン」で「戦闘機は常時搭載しない」は「ノウリョクハアルケレド」。与党が了承した海上自衛隊いずも型護衛艦の改修である▼最新鋭ステルス戦闘機を搭載できるようになる。遠くに攻撃力のある戦闘機を運ぶ能力を持つ。実質的な空母化だ。しかし政府は空母とは呼ばない。常時搭載はしないので、憲法上持つことが許されていないとしてきた攻撃型空母にも当たらないと主張しているそうだ▼うなずく人がいるのかもしれないが、呼び方と理屈で、実体を別のものに見せようとしていませんか。疑問が消えない。外国がみるのは実体のほうだろう。軍拡競争にもつながらないか▼何より「専守防衛との整合性を守る」が「リクツシダイ」になりませんように。